名古屋地方裁判所 平成9年(ワ)3046号 判決 1999年10月22日
平成九年(ワ)第三〇四六号
原告 早川政清
ほか一名
被告
中山俊朗
平成一〇年(ワ)第一九〇三号
原告 宮本龍太
被告
中山俊朗
主文
一 被告は、原告早川政清に対し、金五三〇万八六八八円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告早川良子に対し、金五三〇万八六八八円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告宮本龍太に対し、金一〇三万三二〇〇円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、これを一〇分しその一を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
六 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
1 被告は、原告早川政清に対し、金三九〇七万四九三〇円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告早川良子に対し、金三九〇七万四九三〇円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告宮本龍太に対し、金六〇八万四七〇五円及びこれに対する平成八年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告らが左記一1の交通事故の発生を理由に被告に対し自賠法三条及び民法七〇九条により損害賠償請求をする事案である。
一 争いのない事実
1 交通事故
(一) 日時 平成八年一〇月九日午後二時五六分ころ
(二) 場所 三重県亀山市野村二丁目五番一号
(三) 加害車両 被告運転の普通貨物自動車
(四) 被害車両 原告宮本龍太(以下「原告宮本」という。)運転、亡早川理香(以下「亡理香」という。)同乗の普通乗用自動車
(五) 事故態様 渋滞の最後尾に停車中の被害車両に加害車両が追突
(六) 結果 亡理香が死亡し、原告宮本が負傷
2 当事者
原告早川政清及び原告早川良子は、亡理香の父母であって、亡理香の相続人(相続分各自二分の一)である。
二 争点
亡理香及び原告宮本の損害
第三争点に対する判断
(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)
一 亡理香の損害
1 死亡慰謝料(請求額三〇〇〇万円) 二〇〇〇万円
甲第四号証、弁論の全趣旨によると、亡理香は昭和四四年八月一三日生まれで本件事故当時未だ二七歳で独身であったことが認められ、これらを考慮すると、死亡慰謝料は右の額をもって相当と認める。
2 逸失利益(請求額五四六三万七三二〇円) 一八三五万七三七六円
原告早川政清及び同良子は、亡理香死亡による逸失科益を、女子労働者高専・短大卒二五歳ないし二九歳の賃金センサスに基づいて主張する。
しかし、甲第一一ないし第一四号証、原告早川政清及び原告宮本の各本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すると、亡理香は平成二年に専門学校を卒業して一時医療機関に勤務したもののまもなく退職し、本件事故当時は無職であり、調理師免許を取得して両親の経営する居酒屋から月額八万円の給料の支払いを得ていたものの、勤務時間も定まっておらず、同居の家族として夜間の忙しい時に数時間手伝いをするという程度の働きであったこと、原告宮本と結婚を前提に四年間ほど交際していたものの、未だ同居もしておらず、本件事故当時、亡理香の父である原告早川政清は結婚に反対しており、結婚の日取り等につき具体的な計画はなかったことが認められ、これらに照らすと、亡理香について同年齢の賃金センサスによって逸失利益を算出するのは相当ではなく、死亡した平成八年の高専・短大卒賃金センサスによる平均年収三六三万五一〇〇円の三分の一にあたる一二一万一七〇〇円をもって逸失利益算出の基礎とするのが相当である。そこで、生活費控除割合を三〇パーセント、労働可能期間六七歳まで四〇年間の新ホフマン係数二一・六四三とすると、逸失利益は一八三五万七三七六円となる。
1,211,700×70%×21.643=18,357,376.1
3 葬儀費用等(請求額六五六万七五七三円) 一三〇万円
原告早川政清、同良子が請求する葬儀費用等のうち、本件事故と相当因果関係に立つのは、葬儀費用及び墓石建立費用のうちの一三〇万円の範囲と見るのが相当である。
4 その他の費用(請求額五〇四万二六八八円) 零円
原告早川政清、同良子は、亡理香が原告宮本と平成八年一〇月末日結婚予定であったことから、そのために準備した家具、電化製品、自動車等の合計五〇四万二六八八円も本件事故により亡理香が死亡したことに基づく損害であると主張するが、これらの品が真実購入されていたと認めるに足りる証拠はなく、また、購入されていたとしても原告政清本人尋問の結果によればこれらは現に原告らの手元にあるというのであるから、亡理香の死亡による損害と認めることはできない。
5 小計 三九六五万七三七六円
6 損害の填補 三〇〇〇万円
亡理香の死亡による損害の填補として右の額が既に支払われたことは弁論の全趣旨により認めることができる。したがって、亡理香の死亡による損害残額は九六五万七三七六円(原告政清、同良子各自四八二万八六八八円)となる。
二 原告宮本の損害
1 人身損害(請求額一五〇万七六六六円) 八四万三二〇〇円
(一) 入院雑費(請求額一〇万八〇〇〇円) 四万三二〇〇円
原告宮本が、本件事故により右肩甲骨骨折等の傷害を負い、三六日間入院治療したことは甲第七、第八号証及び弁論の全趣旨により認めることができる。したがって、本件事故と相当因果関係に立つ入院雑費として一日当たり一二〇〇円、合計四万三二〇〇円を認めるのが相当である。
(二) 休業損害(請求額三九万九六六六円) 一一八万三二六三円
乙第三ないし第七号証、原告宮本龍太本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すると、原告宮本の本件事故による休業損害は、一一八万三二六三円であることが認められる。
(585,000+404,700)/90*71+82,500+59,500+260,500=1,183,263.3
(三) 慰謝料(請求一〇〇万円) 八〇万円
原告宮本の本件事故による傷害治療のための入通院日数が入院三六日間、通院実日数二一日間であることは、甲第七、第八号証及び弁論の全趣旨により認めることができる。したがって、本件事故と相当因果関係に立つ入通院慰謝料としては八〇万円が相当である。
(四) 小計 二〇二万六四六三円
(五) 損害の填補 一一八万三二六三円
原告宮本龍太本人尋問の結果、弁論の全趣旨に照らすと、原告宮本が既に人身損害の填補として受領したのは右の額と認められる。したがって、被告が賠償すべき人身損害残額は八四万三二〇〇円となる。
2 物損(請求額九八万円) 一〇万円
原告宮本は、被害車両に搭載中の物品等が本件事故により損壊したとして損害賠償を請求するので検討するに、このうちカーステレオ及び本件事故当時原告宮本が身につけていた衣類及び装身具はその存在を推認し得るものの、原告宮本の主張する取得価格を認めるに足る証拠はなく、せいぜい一〇万円程度をもって本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。そして、その余の物品については、本件事故時に被害車両の内部に搭載されていたと認めるに足る証拠はなく、一般的に自動車内に搭載されているものと推認し得るものでもないから、本件事故による物的損害と認めることはできない。
3 亡理香死亡による慰謝料(請求額三〇〇万円) 零円
原告宮本は、平成八年一〇月末日に結婚予定であった婚約者である亡理香の死亡により精神的苦痛を被ったとして損害賠償を請求するが、前記認定のとおり、本件事故当時、原告宮本と亡理香とが結婚を前提に交際していたことは認められるものの、亡理香の父親の反対もあって結婚は長く具体化しておらず、未だ同居もしていなかったと認められる。そうすると、原告宮本と亡理香との関係を配偶者又はこれと同視し得る関係と見ることはできず、したがって、亡理香死亡による原告宮本の精神的苦痛につき第三者に対して損害賠償を請求することもできないとするのが相当である。
4 小計 九四万三二〇〇円
三 弁護士費用(請求額・原告早川政清及び同早川良子各自五九五万一一四〇円・原告宮本五九万七〇三九円)
原告早川政清及び同早川良子各自四八万円・原告宮本九万円
右に認定の原告らの損害額に照らし、弁護士費用のうち原告早川政清、同良子については各自四八万円、原告宮本については九万円の範囲で本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
四 結論
以上によれば、原告早川政清、同良子の請求は各自五三〇万八六八八円、原告宮本の請求は一〇三万三二〇〇円の範囲でいずれも理由がある。
(裁判官 堀内照美)